AMR対策について【歯科医療従事者向け】

AMR 歯科と口腔外科の症例集

この記事ではAMR(薬剤耐性)について、これまでの私の臨床経験と知見を中心に分かりやすくまとめました。

AMR (Antimicrobial Resistance、薬剤耐性)とは

薬剤耐性のことで国際的にも大きな課題となっています。抗菌薬は内服によって、知らないうちにその抗菌薬に対しての耐性が出来てしまいます。

歯科においては、本来は必要ないが、抗菌薬を処方しているケース(簡単な抜歯後等)が多くあります。そして、抗菌薬の効果が本当に必要となる肺炎の治療時等(高齢時)に、その抗菌薬が効かずに亡くなられるケースがあります。

AMR感染症について

イギリス政府の発表では、AMR感染症による死者が全世界で年間に70万人であり、対策を講じない場合には2050年には1,000万人に達し、がんによる死亡者(800万人)を上回り、経済的な損失は100兆ドルに達すると予測されています。

日本(厚生労働省)では2016 年からAMR対策アクションプランが始まっていますが、まだまだ認知度は低いのが現状です。

歯科だけでなく、医療界全体でこのAMR対策に取り組む必要があり、「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」を守るべきです。抗菌薬の適正使用のため、ダラダラとした抗菌薬投与を改善する必要があります。

術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン(歯科口腔外科)について

下記に歯科口腔外科領域に関する内容を抜粋しました。
・心内膜炎やSSIのリスク因子がない抜歯の場合は、予防抗菌薬投与は推奨されていません。(歯科医院での多くの抜歯において、抗菌薬の投与は必要ないということです。)
・SSIのリスク因子がある抜歯の場合は、AMPC(経口1回250mg~1g)またはCVA/AMPC(経口1回375mg~1.5g)を推奨されています。
・感染性心内膜炎の高リスク症例で抜歯の場合は、 術前に単回のABPC(注)またはAMPC(経口2g)を推奨されています。
・下顎埋伏智歯抜歯手術の場合は、AMPC(経口1回250mg~1g)またはCVA/AMPC(経口1回 375mg~1.5g)を推奨されています。
・歯科インプラント埋入手術の場合は、術前に単回のAMPC(経口250mg~1g)を推奨されています。
・下顎骨骨折手術(口腔内切開を伴わない)の場合は、CEZを推奨されています。
・下顎骨骨折手術(口腔内切開を伴う)、顎変形症手術、顎骨腫瘍・顎骨嚢胞手術(口内法)、顎骨悪性腫瘍手術(辺縁・部分切除にとどまる)、顎骨悪性腫瘍手術(遊離皮弁を用いるもの)の場合は、SBT/ABPCまたはCMZを推奨されています。

歯性感染症に対する抗菌薬について

・歯周組織炎(第1群)、歯冠周囲炎(第2群):
経口薬のAMPC(アモキシシリン、サワシリン®)が第1選択です。

・顎炎(第3群)、蜂窩織炎(第4群):
経口薬のSBTPC(スルタミシリン、ユナシン®)、CVA/AMPC(クラブラン酸/アモキシシリン、オーグメンチン®)、AMPC(アモキシシリン、サワシリン®)が第1選択です。

・開口障害や嚥下困難を伴う顎炎(第3群)および顎骨周囲の蜂窩織炎(第4群):
中等症では、注射薬のSBT/ABPC(スルバクタム/アンピシリン、ユナシンS®)、CTRX(セフトリアキソン、ロセフィン®)を使用します。

重症例では、MEPM(メロペネム、メロペン®)、DRPM(ドリペネム、ドリペネム®)を使用します。壊死性筋膜炎など最も重篤な症例では、カルバペネム系薬とCLDMを併用します。

抗菌薬の耐性化を防ぐ方法とは

・推定される原因菌の薬剤耐性化傾向を知り、適切な抗菌薬を選択します。
・3日間投薬し臨床的に効果が認められない場合は他薬に変更します。
・膿瘍は積極的に切開し排膿させます。
・消炎後は原因の除去を行うことが重要です。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

【参考文献】
・最新口腔外科学第5版(榎本昭二他、医歯薬出版株式会社)
・術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン(日本化学療法学会/日本外科感染症学会、術後感染予防抗菌薬適正使用に関するガイドライン作成委員会編)

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