歯性感染症、蜂窩織炎について

蜂窩織炎 歯科と口腔外科の症例集

この記事では歯性感染症、蜂窩織炎について、これまでの私の臨床経験と知見を中心に分かりやすくまとめました。

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感染症とは

病原体がなんらかの経路によって体内に侵入し、生体の防御反応を生じた結果、宿主に臨床症状を発現するようになった状態のことです。

感染から発病に至るまでの間には潜伏期が存在し、その長さは宿主と病原体の双万の因子によって決まります。急性感染症の多くは、発病から症伏悪化までの経過が早く、一方、慢性感染症は急性に比べて病気の進行の経過が長く、なかには感染から発病に至るまでに10年以上の経過をたどるのも少なくないです。

感染症の原因とは

原因となる病原体には、細菌、真菌、ウィルス、原虫、寄生虫がありますが、顎口腔領域での感染症では、細菌によるものが最も多く、次いで真菌、ウィルスも見られます。

日和見感染症とは

さまざまな理由で感染防御機構に障害をきたし、感染症に罹患しやすくなった易感染性患者が増加しています。このような患者では、弱毒あるいは健常者には無害の微生物でも発病し、これを日和見感染症とよんでいます。口腔内常在細菌叢には500種類を超える細菌が生息しており、口腔内細菌には日和見感染症を起こすものが多いです。

歯性感染症とは

大きく分けて次の4つに分類されます。

・歯周組織炎(第1群):歯槽骨炎、歯槽膿瘍、歯周炎、抜歯後感染などの歯と周囲組織に限局した炎症のこと
・歯冠周囲炎(第2群):智歯周囲炎などの歯と歯冠周囲の炎症のこと
・顎炎(第3群):顎骨骨髄炎、顎骨骨膜炎などの顎骨およびその周囲に限局した炎症のこと
・顎骨周囲の蜂窩織炎(第4群):顎骨に隣接した軟組織内あるいは組織隙などに拡大した炎症のこと

歯性感染症の原因とは

歯性感染症のほとんどは口腔常在菌が関与する内因感染で、嫌気性菌および好気性グラム陽性球菌の複数菌感染症です。最近の報告では、原因菌の約88%が嫌気性菌で、嫌気性菌グラム陰性桿菌が全体の52%を占めていました。

原因疾患としては、う蝕、根尖病巣、歯根嚢胞、顎骨嚢胞、智歯周囲炎、骨髄炎、薬剤関連顎骨壊死(ビスホスホネート関連顎骨壊死、デノスマブ(ランマーク)等の薬剤による顎骨壊死)等です。

重症度の判定

感染部位の炎症所見(発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能障害)と血液検査により診断します。血液検査により指標として、主にCRP(C反応性タンパク)が用いられます。CRPは血清中の肺炎球菌のC多糖体と沈殿反応を呈するタンパク質で、生体内に炎症や組織破壊がある時に出現します。

・軽度:発赤、熱感、軽微な腫脹や疼痛の程度で、CRPが0.3~1.0mg/dL
・中等度:CRPが1.0~10.0mg/dL
・重度:CRPが10.0mg/dL以上

中等度以上では、血液検査で加えて、白血球数の増加、好中球数/リンパ球数比の増加、白血球分画で分葉核白血球が減少し桿状白血球の出現が認められます。

歯性感染症に対する抗菌薬とは

・歯周組織炎(第1群)、歯冠周囲炎(第2群):
経口薬のAMPC(アモキシシリン、サワシリン®)が第1選択です。

・顎炎(第3群)、蜂窩織炎(第4群):
経口薬のSBTPC(スルタミシリン、ユナシン®)、CVA/AMPC(クラブラン酸/アモキシシリン、オーグメンチン®)、AMPC(アモキシシリン、サワシリン®)が第1選択です。

・開口障害や嚥下困難を伴う重症の顎炎(第3群)、蜂窩織炎(第4群):
中等症では、注射薬のSBT/ABPC(スルバクタム/アンピシリン、ユナシンS®)、CTRX(セフトリアキソン、ロセフィン®)を使用します。

重症例では、MEPM(メロペネム、メロペン®)、DRPM(ドリペネム、ドリペネム®)を使用します。壊死性筋膜炎など最も重篤な症例では、カルバペネム系薬とCLDMを併用します。

エンピリック治療とは

原因菌が同定されるまでに投薬を開始することです。

蜂窩織炎とは

虫歯・歯周炎・根尖性歯周炎・歯根嚢胞等は、細菌が感染しゆっくりと炎症を進行させるのに対し、 急性の経過をたどった際は、顎骨の炎症、さらには周りの組織や顎骨の外への炎症(蜂窩織炎)に波及します。顎口腔領域では、口底部、頬部、頚部に蜂窩織炎が認められ、開口障害が生じます。

重症な場合には眼窩から脳、頸部から心臓や食道などの炎症、さらには敗血症を起こして命に関わることもあります。糖尿病等の免疫力が低下している状況では感染の重症化が起こりやすくなります。

また、壊死性軟部組織感染症のガス壊疽と壊死性筋膜炎では、死亡することもあるため、可及的すみやかに消炎手術が必要となる。

蜂窩織炎に対する治療とは

①まずは消炎処置(採血、エックス線撮影等の検査後)
・局所の切開・排膿処置(ドレナージ)
・抗菌薬等の点滴、内服
・症状によっては入院での治療が必要になる場合もあります。

②原因歯の治療
炎症が落ちついた段階で、原因歯の治療を行います。
ほとんどの場合は抜歯が必要になりますが、根管治療を行う場合もあります。

ドレーンについて

切開・排膿処置時に使用するドレーンには、ペンローズドレーンとネラトンカテーテルがあります。1週間程度でドレーンを抜去できる症例にはペンローズドレーン、それ以上のドレナージ処置が必要な症例にはネラトンカテーテルを使用します。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

【参考文献】
・最新口腔外科学第5版(榎本昭二他、医歯薬出版株式会社)
・JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2016―歯性感染症―(日本感染症学会,日本化学療法学会編)
・術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン(日本化学療法学会/日本外科感染症学会、術後感染予防抗菌薬適正使用に関するガイドライン作成委員会編)

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