人工知能と歯科②【我々のX線画像認識AIについて】

気になる歯科情報

私は2018年3月からAOI国際病院にて「歯科口腔外科領域におけるエックス線画像のAI開発」を行っています。開発の経緯等に関する内容については、以前の記事(人工知能(AI)と歯科について①)をご参照ください。
この記事では、これまでの研究開発の成果・AWS上での構築・今後の課題についてまとめてみました。

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これまでの研究開発の成果

1.歯科疾患の画像認識AI(パノラマX線)
・対象疾患は4つ(う蝕、根尖病巣、根分岐部病変、顎骨嚢胞)
・アノテーションデータは約3万枚
・根分岐部病変AIの論文(パノラマエックス線画像における根分岐部病変を自動検出するAIモデルの開発. 日本歯周病学会誌, 2021)
・顎骨嚢胞AIの論文(Development of an automatic detection model using artificial intelligence for the detection of cyst-like radiolucent lesions of the jaws on panoramic radiographs with small training datasets. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology, 2022)
・AWS(アマゾンウェブサービス)上に構築
・特許取得
特許出願日:2018年6月4日、特許取得日:2021年1月27日
特許の名称:歯科分析システムおよび歯科分析X線システム
出願番号:特願2018-107011、特許番号:特許第6830082号
特許発明者:田島聖士
特許出願人:田島聖士、医療法人社団葵会

2.歯式の画像認識AI(パノラマX線)
・アノテーションデータは約3万枚
・論文執筆中

3. インプラント種類の鑑別AI(デンタルX線)
・アノテーションデータは約10万枚(複製も含む)
・現在、鑑別精度を高めるために開発中
・インプラント情報を配信しているSNS:InstagramTwitternote

AWS上での構築とAWSカオスマップ

パノラマX線画像を用いた歯科疾患の診断支援AIは、AWS(アマゾンウェブサービス)上で使用できるように構築されています。
現時点では、まだ皆さんにご利用頂けるようになっておりませんが、実際の使用感は下記動画のとおりです。

歯科疾患の診断支援AIの動画

AWSカオスマップ
アマゾンウェブサービスを用いたサービスを行っている利用例として、下記のようにAWS様からご紹介頂いております。

今後の課題

プログラム医療機器の臨床試験・PMDAへの申請・許可、および費用について

開発した医療AIが臨床で実装できるかは、プログラム医療機器に関する通知(平成26年)において「1.医療機器に該当するプログラム」に当たるか否かです。具体的には、その医療AIが診断の支援をしているか、していないかということになります。

医療機器に該当するプログラムの場合は、薬機法に基づいた資料作成、事前面談、対面助言、有効性や安全性の試験(臨床試験)を行い、医薬品医療機器総合機構(PMDA)への申請、許可が必要になり、実装までのハードルが上がり早くても数年が必要となります。

また、プログラム医療機器の臨床試験・PMDAへの申請・許可には、最低でも数億から数十億の費用が必要であり資金調達も大きな課題となります。

研究体制の整備について

歯科におけるAI開発を促進するためには各個人、大学、企業での開発だけではなく、学会などによる開発支援や大規模共同研究も必要であり、また学会による積極的な整備や提言も期待されます。
今後、歯科医療従事者が上手にAIを使いこなすために、医療AIの正しい理解と研鑽も不可欠です。

我々が開発しているエックス線画像認識AIの社会実装に向けて、この開発にご協力頂ける方がいらっしゃいましたら、是非ご連絡いただければ幸いです。多くの方々と一緒に歯科画像認識AIを作っていきたいと思っております。

また、AI作成の仕方や精度の高いアノテーションデータの作成方法など、ご質問のある方も問い合わせ先からご連絡いただければと思います。

【参考文献】
・田島聖士, 園田央亙, 小林誉: パノラマエックス線画像における根分岐部病変を自動検出するAIモデルの開発. 日本歯周病学会誌, 63: 2021.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/63/3/63_119/_article/-char/ja

・Satoshi Tajima, Yoshiyuki Okamoto, Takashi Kobayashi, Maiko Kiwaki, Chikanobu Sonoda, Kaori Tomie, Hiroto Saito, Yoshimi Ishikawa, Takayoshi Shintani: Development of an automatic detection model using artificial intelligence for the detection of cyst-like radiolucent lesions of the jaws on panoramic radiographs with small training datasets. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology, 2022
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2212555822000345?dgcid=author

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