腎機能障害と歯科について

透析 歯に関わる医療情報

この記事では腎機能障害と歯科治療について、これまでの私の臨床経験と知見、ガイドラインを中心に分かりやすくまとめました。

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慢性腎不全患者の特徴

  • 易感染性:貧血、低タンパク血症、ステロイド薬の投与などにより易感染状態を認めます。
  • 口腔内乾燥:腎透析患者では唾液分泌量は約1/4に減少すると言われます。
  • 骨代謝障害:腎障害によりビタミンDの活性化が障害されると、カルシウム吸収障害とリン排泄障害が生じます。その結果、低カルシウム血症、高リン血症となります。
    これが契機となって二次性副甲状腺機能亢進症を引き起こすことで、骨からの脱カルシウムが起こります。これを腎性骨異栄養症とよび、骨強度の低下が生じます。

腎機能障害の目安

  • 慢性腎臓病(CKD)は原疾患、GFR(糸球体濾過量)、尿蛋白のステージによって重症度分類されます。
  • 臨床ではeGFR(推算糸球体濾過量)が指標として用いられ、腎臓が老廃物を尿へ排泄する能力を示しています。
  • 抗菌薬投与ではCCr(クレアチニンクリアランス)50未満が目安となり、投与量の調整が必要となります。
  • 腎機能低下症例の薬物使用にあたっては、CCr(mL/min)が記載されています。
    標準体型に近い場合はCCr(mL/min)と eGFR(mL/min/1.73 m2 )を同等とみなして使用できます。(CCr≒eGFRとみなして使用)
  • ただし、筋肉量や体型が標準ではない場合(高齢者で極度に痩せている場合ではCreが低く、体表面積が1.73より小さくなる)は高めの数値がでてしまうため注意が必要です。
    eGFR(mL/min/1.73 m2)=194×Cr-1.094× Age-0.287 (女性はこれに×0.739)

歯科治療時に気を付けること

① 合併症を持つ患者が多いため注意する。

  • 高血圧の場合は、循環器系(血圧、心拍数など)のモニターを行います。その際に透析患者ではシャント側にマンシェットを装着しない様にします。また、血圧上昇の原因となる疼痛や不安は可及的に取り除きましょう。
  • 脳梗塞や冠動脈疾患などで抗血小板薬、抗凝固薬を服用時は、止血床、局所止血剤、粘膜縫合などで局所止血を確実に行います。 
    通常の抜歯に際しては、抗血小板薬や抗凝固薬は継続下に行う事が望ましいとされます。ワーファリン内服時の目安は各疾患の至適治療域となります(2015年版ではPT-INR3.0以下とされていましたが2020年版で変更されています)。
  • 慢性糸球体腎炎やネフローゼ症候群では長期のステロイド剤使用により副腎機能が低下している場合があります。歯科処置時のストレスを避け、医師とステロイド剤の増量(ステロイドカバー)が必要か相談しましょう。
  • 免疫抑制剤など使用している場合は易感染性であるため、処置時に感染予防に注意し、術前後の抗菌薬の使用を検討しましょう。その際、マクロライド系はタクロリムスやシクロスポリン等の免疫抑制剤に影響を与えるため注意が必要です。

② 薬剤の投与量に注意する。

  • 腎排泄性の薬剤では、腎機能に応じて薬剤の投与量、投与間隔、透析の有無などで調整が必要となります。ペニシリン系やセフェム系は減量が必要で、ジスロマックは常用量の使用可能です。
    他の薬剤に関しては、CKD診療ガイド2012:腎機能低下時の主な薬剤投与量一覧p100-125(日本腎臓学会編)がインターネットで閲覧可能なため、投与量を参照したい場合には便利です。
    URL:CKDguide2012.pdf (jsn.or.jp)
  • 鎮痛薬の使用に関して、腎機能が低下している患者や高齢者では、NSAIDs(ロキソニン)は、①COX2阻害による腎血流量低下、②尿細管細胞障害により腎障害を生じます。
    よって、アセトアミノフェンの使用が提案されています(ただし、アセトアミノフェンも長期投与の安全性は不確定とされています)。

透析患者で気を付けること 

  • 透析の原因疾患、合併症、透析間隔の確認と投薬の可否などを医科主治医に確認する。
  • 抜歯などの処置を行う際は非透析日が望ましいです。理由として、透析時はヘパリンを使用するため易出血性となります。しかし、透析日に処置が必要な場合や、処置後の透析時まで出血が予想される場合は透析医に連絡し、抗凝固剤を低分子ヘパリンやメシルサンナファモスタットへと変更してもらうことで出血リスクを減らすことが可能です。
  • 多数歯の同時抜歯や出血が予想される手術は、術後止血管理が十分に行える施設で行う。
  • 点滴を行う場合には、最小限の輸液で管理する。

腎機能障害患者への処方時のポイント

  • eGFR(推算糸球体濾過量)が50未満や痩せすぎの高齢者には投与量に注意が必要。
  • 腎機能低下時にはNSAIDsは控えてアセトアミノフェンを使用する。
  • 薬の投与量に関しては上記表を参照する。

今回は、腎機能障害患者に関する注意点をまとめました。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。

【参考文献】
・CKD診療ガイド2012(日本腎臓学会編、CKDguide2012.pdf (jsn.or.jp)
・最新口腔外科学第5版(榎本昭二他、医歯薬出版株式会社)



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