歯や口の外傷について

口腔外傷 歯科と口腔外科の症例集

この記事では口腔外傷について、これまでの私の臨床経験と知見を中心に分かりやすくまとめました。

口腔外傷とは転倒・けんか・事故等により、歯・顎骨・口腔軟組織(口唇・顔面皮膚・舌・頬粘膜等)のけがのことです。

子供では、遊び中の転倒や子供同士の衝突が多いです。
1歳〜2歳の歩き始めの頃、3歳~6歳の走って遊ぶようになる頃に、転倒、衝突によって、上顎の前歯(乳歯または永久歯)をぶつけやすいので注意が必要です。

スポンサーリンク

歯牙破折

歯の外傷には、歯牙破折、歯牙打撲、歯牙脱臼等があります。

外傷等により、歯が欠けたり折れたりすることで、欠けた歯の大きさ等によって治療が異なります。
歯が小さく欠けた場合:レジン(プラスチック樹脂)の白い詰め物を使用して治療します。
歯が大きく欠けた場合:神経(歯髄)の治療が必要になり、最終的に被せ物(クラウン)を被せます。
歯根が折れた場合:抜歯になることがあります。

歯牙打撲・歯肉出血

歯をぶつけた場合、一時的に歯根膜[歯と歯槽骨(歯を支えている骨)の間の靭帯]のみが炎症を起こすことがあります。歯や歯槽骨には目立った外傷がないことが多いです。
この場合は特に治療は必要なく、1~2週間で痛み等の症状がなくなります。

また、歯の周り(歯と歯茎の隙間)から出血していることがあります。
軽い歯の外傷のため、出血は自然と止まることが多いです。
歯の位置がずれていなく、グラグラしていない場合は経過観察になります。

歯牙脱臼(完全脱臼と不完全脱臼)

歯が歯槽骨から完全に抜けてしまった状態のことです(完全脱臼)。この場合は、歯を元に戻すことが第一選択になります。

歯を歯槽骨内に戻し固定すること(歯牙再植)により、完全脱臼した歯でも元通りに治して、歯の動揺を抑えるためにワイヤーやレジン等を用いて歯を固定します。

抜け落ちた(完全脱臼した)歯を持って、出来るだけ早く歯科医院に行く必要があります。
抜けた歯を持って行く際は、歯を乾燥させないよう牛乳等に浸して下さい。

外傷等により歯が抜けかかったもので、歯がグラグラと動揺している状態のことです(不完全脱臼)。この場合は外傷の衝撃により歯髄(血管・リンパ管等があり、歯に栄養を与えている神経)に炎症を起こすことがあるため経過観察が必要です。

歯がグラグラしている場合は、歯を元の位置を戻して固定をする必要があります。
必要に応じて、歯の動揺を抑えるためにワイヤーやレジン等を用いて歯を固定します。

歯牙変色

歯の色が黒っぽく変色していることです。
受傷してから1カ月以降に歯の色が変わる場合があります。

神経にダメージがあることが多く、乳歯の場合はこれから生えてくる永久歯に影響が出る可能性もあるため、早めの歯科受診をお勧めします。

軟組織の外傷

軟組織の外傷は転倒等による、口唇や顔面皮膚の裂傷、舌や頬粘膜の咬傷等があります。受傷時には出血がありますので、まずはハンカチやタオル等で圧迫して止血するように押さえます。

幼児が箸やスプーン等をくわえたまま転倒した場合、口蓋に突き刺さることもあります。

軟組織の外傷の処置としては局所麻酔を行い、砂利等の異物を洗浄します。
深い傷や大きい傷の場合は、縫合が必要になりますので、歯科医院または総合病院の口腔外科を速やかに受診して下さい。

顎骨の骨折

顎骨の骨折は転倒・けんか・スポーツ・交通事故等によって、上顎骨・下顎骨・頬骨・頬骨弓・鼻骨の骨折があります。
顎骨骨折では疼痛・腫脹・出血・開口障害・咬合不全・軟組織損傷等の症状があり、手術が必要になることが多いため、早急に総合病院の歯科口腔外科に受診して下さい。

顎骨骨折の治療としては、非観血的治療(出血を伴わない治療)と観血的治療(入院、全身麻酔下での出血を伴う手術)があります。

非観血的治療は、骨折した骨にズレがない場合で、ワイヤーによる固定等で非観血的に行います。
観血的治療は、骨折した骨にズレがある場合で、入院し全身麻酔下での手術になります。手術では、骨折部を整復し咬み合わせも改善した後、骨折部を金属プレートや吸収性プレートで固定します。

歯や口の外傷が起きた場合は、出来るだけ早く歯科医院や総合病院の歯科口腔外科を受診して下さい。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。

【参考文献】
・最新口腔外科学第5版(榎本昭二他、医歯薬出版株式会社)

コメント

タイトルとURLをコピーしました