口にでき物を見つけた時に確認すること(口腔粘膜疾患①)

口のできもの 歯科と口腔外科の症例集

患者さんから、「口内炎が出来て1週間も経つけどまだ治りません、がんではないか心配です」という事がしばしばあります。この記事では口のでき物について、これまでの私の臨床経験と知見を中心に分かりやすくまとめました。

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口の粘膜疾患とは

お口の粘膜(舌・口唇・歯肉・頬粘膜等)に発赤・ただれ・潰瘍・腫瘤・水疱等の症状が出る疾患です。口腔内には多種類・多数の常在菌が存在し、粘膜疾患の症状も多岐に渡るため、診断や原因の特定が難しい場合もあります。

口内炎(アフタ性口内炎)

アフタ性口内炎は、円形の浅い潰瘍で、潰瘍の表面は白色の半球状の膜で覆われ、その周囲は赤色を呈します。症状は、歯ブラシや食べ物等が触れて痛む接触痛があります。

治療には、副腎皮質ステロイド薬入りの軟膏や口腔粘膜貼付錠、うがい薬を使用します。

何も薬を付けなくても通常は1~2週間で治りますので、2週間経っても口内炎が治らない場合は受診しましょう。

口腔扁平苔癬〈へんぺいたいせん〉

炎症と伴い表面が厚く堅くなる難治性の病気で、主に頬粘膜・舌・口唇・歯肉・口蓋等にできます。

堅く、白い粘膜がレース状にみられ周囲に赤みがあることが特徴です。ただれや潰瘍を形成し、接触痛を伴うことがあります。まれにがん化することもあります(約1%)。

また原因は不明ですが、アレルギー(歯科金属アレルギー等)、遺伝、自己免疫疾患、ストレス等で口腔扁平苔癬が発生することもあります。

治療には、うがい薬や副腎皮質ステロイド薬を含む軟膏を使いますが、難治性であることが多いです。歯科金属アレルギーが疑われる場合は、原因と思われる金属を除去する前に金属アレルギー検査を行います。

口腔白板症〈はくばんしょう〉

頬粘膜、舌、歯肉に見られる白いもので、こすっても剥がれません。

白板症は比較的頻度も高く、とくに舌にできたものは悪性化する可能性が高いため、前がん病変とされています。ただれを伴うこともあり、接触痛等があります。喫煙やアルコールによる刺激、義歯などによる刺激、ビタミンAやBの不足、加齢や体質等も関係すると言われています。

治療にはビタミンAの投与やうがい薬を使用します。禁煙により治癒することもあります。しこりや潰瘍を伴うものは初期がんが疑われるため、組織をとって検査する必要があります。白い部分が厚いもの、盛りあがったもの、ただれや潰瘍を伴うものは、がん化する可能性が高いので切除します。長年かかって悪性化する場合もあり、長期の経過観察が必要になります。 

口腔紅板症〈こうばんしょう〉

紅色肥厚症〈こうしょくひこうしょう〉とも言われ、鮮やかな紅色で表面が平たく滑らかになっています。境界は明瞭なものが多く、初発症状としては接触痛、刺激痛が認められます。50歳代以上の高齢者が全体の約80%を占め、口腔紅板症の約50%が悪性化するといわれています。

治療には、外科的に切除するのが望ましく、悪性化する可能性が高いため長期の経過観察が必要です。

検査について

これまでに説明した口腔扁平苔癬、口腔白板症、口腔紅板症等が認められる場合は通常、まず視診、ルゴール染色検査、細胞診の検査をします。

その後、必要に応じて生検を行い、組織を顕微鏡で見る検査を行います。

ルゴール染色検査

0.2~1.0%のヨウ素・ヨウ化カリウム溶液を口腔粘膜に塗布して検査する方法です。ヨウ素・でんぷん反応を用いた染色の程度で判断します。

正常粘膜は細胞内にグリコーゲンを含んでいるため、ルゴール染色でヨウ素・でんぷん反応が起こり、粘膜が茶色に染色されます。

正常でない粘膜(口腔扁平苔癬、口腔白板症、口腔紅板症、口腔がん)は、グリコーゲンを含まないので茶色に染色されず不染帯の部分が確認できます。

不染帯が認められる部分については、必要に応じて、細胞診、生検と検査を進めていきます。

細胞診

細胞診はできものの表層の細胞を少しぬぐい取り、顕微鏡で検査する簡便な検査方法です。局所麻酔はせず、できものの表面を歯間ブラシ等でこすって採取します。

結果はその細胞の種類により、5段階(クラスⅠ〜Ⅴ)で評価します(パパニコロウ染色)。

  • クラスⅠ:正常細胞(異常はなし)
  • クラスⅡ:異型細胞は存在するが、悪性ではない
  • クラスⅢ:Ⅲa 軽度・中等度異型性(悪性を少し疑う)
  • クラスⅢ:Ⅲb 高度異型性(悪性をかなり疑う)
  • クラスⅣ:悪性細胞の可能性が高い
  • クラスⅤ:悪性と断定できる異型細胞がある

生検

局所麻酔後に、メス等で病変部から組織を採取し、病理検査(顕微鏡で細胞を詳しく見る検査)を行って診断をする方法です。この検査は出血を伴うため、もし採取した病変ががんであった場合は、この検査によりそのがんが転移することも考えられます。

そのため、この生検を行う際は、検査後のことも考慮し、口腔がんの治療(手術、化学療法、放射線療法等)を行っている病院での検査をおすすめします。

どこに受診するべきか、注意する事

口内炎が出来て直ぐであれば、経過観察か、口内炎の薬を塗布するか、かかりつけの歯科医院に受診しましょう。ただし、2週間経っても治らない場合は総合病院の歯科口腔外科を受診して、ルゴール染色検査や細胞診の検査を受けましょう。

まとめ

・口内炎はまずは経過観察か、口内炎の薬を塗布するか、かかりつけの歯科医院を受診する。
・口内炎が出来て2週間経っても治らない場合は総合病院の歯科口腔外科を受診する。
・口腔扁平苔癬、口腔白板症、口腔紅板症等が認められる場合は、総合病院の歯科口腔外科を受診して、ルゴール染色検査や細胞診の検査を受ける。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

【参考文献】
・最新口腔外科学第5版(榎本昭二他、医歯薬出版株式会社)
・第5版 SIMPLE TEXT 口腔外科の疾患と治療(栗田賢一他、永末書店)

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