根管治療について【患者様向け】

根管治療 患者様向け情報

この記事では根管治療について、これまでの私の臨床経験と知見を中心に分かりやすくまとめました。

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根尖性歯周炎

根尖性歯周炎〈こんせんせいししゅうえん〉とは、虫歯菌等の細菌が歯根〈しこん〉(歯茎に埋まって見えない部分の歯)の先端で炎症を起こして、膿が溜まっている状態です。歯肉や歯槽骨〈しそうこつ〉(歯を支えている骨)にも徐々に波及していき、疼痛等の症状が出る急性と慢性があります。

急性ではかんだ時の痛みや違和感、何もしなくても痛いといった症状が出ます。

慢性では痛みなどの症状はほとんどなく、エックス線で歯根の先端に黒く写っている場合は根尖性歯周炎等の可能性が高いです。黒く写るということは、細菌により骨が溶けているという状態になります。

根尖性歯周炎の治療方法は、感染根管治療〈かんせんこんかんちりょう〉で、歯根の中にある根管を綺麗に洗浄し消毒する治療です。

歯根嚢胞

歯根嚢胞〈しこんのうほう〉とは、歯根の先端に膿の袋ができる病気です。

歯根嚢胞は、初期では痛みなどの症状は少なく、エックス線により分かることが多く、根尖性歯周炎よりもエックス線で歯根の先端に大きな黒い像が見られます。

症状が出ないため治療せずに放置していると、膿の袋が徐々に大きくなっていきます。そのため、歯根の周りの骨だけでなく、顎骨が大きく溶けてしまうことが多いです

嚢胞には上皮細胞、膿、炎症細胞、白血球などが含まれています。体が炎症に対して防御反応をするため、上皮が膿や炎症細胞等を取り囲んで歯根嚢胞ができます。

歯根嚢胞の治療方法は、その症状や大きさにより異なります。感染根管治療、歯根端切除術〈しこんたんせつじょじゅつ〉、嚢胞摘出術〈のうほうてきしゅつじゅつ〉等を組み合わせて、嚢胞の除去と歯の保存を第一優先とし、局所麻酔や全身麻酔での治療をしますが、どうしても歯の保存ができない場合は抜歯になることもあります。

感染根管治療

感染根管治療とは、根尖性歯周炎や歯根嚢胞に対する治療で根管内を綺麗にする処置のことです。

感染根管治療の流れ

  1. 急性症状が強い場合は局所麻酔をする。
  2. 虫歯や被せ物の除去をする。
  3. 歯の根の管(根管)の中を掃除、洗浄して感染している根管を綺麗にする(過去に不十分な根管充填がされている場合は根管充填剤を除去する)。
  4. 根管に薬を詰めて仮の蓋をする。
  5. 上記③と④を何度か繰り返して、最終的な薬を詰める(根管充填)。

感染根管治療が必要な歯

  • 虫歯が進行して歯髄〈しずい〉(血管・リンパ管等があり、歯に栄養を与えている神経)が壊死した場合
  • 以前の根管治療が不十分で根管内が感染している場合

根管充填

根管充填〈こんかんじゅうてん〉とは、根管内の掃除、洗浄などが終わった後に行われる治療で、根管内が綺麗になった状態で行う処置です。

根管充填の方法は、根管治療後に根管内部をガッタパーチャと呼ばれる天然ゴムを含む材料で詰め込むことです。ガッタパーチャを緊密に詰めることにより、歯の内部を密閉して細菌が繁殖する場を無くし、歯髄(血管・リンパ管等があり、歯に栄養を与えている神経)にまで及んだ細菌感染の無害化を継続することができます。

ガッタパーチャ等の材料にはエックス線に写る成分が含まれているため、根管充填が適切に行われたかの確認はエックス線で行います。根管充填が不十分で根管内に隙間が生じている場合は、再び細菌感染が引き起こされることがあります。歯根の先端までガッタパーチャが行き届いていない場合もあり、その際は再度、根尖性歯周炎になる可能性もあります。

根管治療の成功率

再根管治療ではその成功率は低いとされています。
初回の根管治療の成功率は約90%、再根管治療では約60%という報告や、初回の根管治療の成功率は74.6%、再根管治療では76.7%としている報告もあります。

根管治療の成功については、如何に根管内細菌の除去または根管内封じ込めを行うかにかかっています。根管治療の予後が良くない場合の治療法には、歯根端切除、歯牙再植、抜歯等の処置が必要になります。

根管治療について気になることがある場合は、かかりつけ歯科の先生に聞いてみることをお勧めします。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。

葵会グループ
AOI国際病院 歯科口腔外科部長(神奈川県川崎市川崎区)
医療創生大学 歯科衛生専門学校校長(千葉県柏市)
田島聖士

【参考文献】
・新版家族のための歯と口の健康百科(伊藤公一他、医歯薬出版株式会社)
・エンド難症例メカニズムと臨床対応(恵比寿繁之編、医歯薬出版株式会社 )
・Factors affecting the long-term results of endodontic treatment. (Sjogren et.al, J.Endodontic.16:498-504, 1990)

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