本記事では、健康寿命延伸のために、自分の身体・臓器が現時点で”何歳に相当するか”の体年齢(体内年齢・血管年齢・骨年齢・肺年齢・脳年齢・心臓年齢)を指標として活用されているアプリケーションを整理し、われわれが開発した「お口年齢AI」についても解説いたします。
健康寿命とは
「健康寿命」とは、簡潔に言えば「日常生活に支障なく、自立して暮らせる期間」を指します。
つまり、どれだけ長く“質の高い自分らしい暮らし”を維持できるか、という観点からの年数になります。
日本人の平均寿命は世界的にも長いものの、平均寿命と健康寿命との差にはおおよそ10年程度のギャップがあります。つまり、多くの方が最後の数年間を何らかの医療・介護支援を必要として過ごしている、ということです。

この「ギャップ(寿命と健康寿命の差)」をどれだけ縮められるかが、個人の健康管理、健診、オーラルフレイル、フレイル、医療・介護制度という文脈でも重要になっています。
そのためには、「実年齢」だけでなく、自分の身体・臓器・機能が現時点で“何歳相当か”を知ること、つまり“生物学的年齢”や“機能的年齢”を把握することが出発点となります。

日本では、身体や機能・臓器ごとに「○○年齢」という指標が多く提供されています。以下に、その主要な指標・サービス・特徴を簡潔にご紹介します。
体年齢とは
「体年齢」とは、家庭用の体重体組成計などに搭載されている指標です。
オムロンの体重体組成計は、体年齢とは基礎代謝をもとにカラダの状態を年齢であらわしたものです。
また、基礎代謝は体重、体脂肪率、骨格筋率などを総合して算出しているため、体年齢は自分の体を総合判定する目安になります。(参考資料:体年齢とは何ですか? | 商品・サービスに関するよくあるご質問 | オムロン ヘルスケア)
ただし、あくまで見た目の代謝・体組成に基づくため、臓器機能・血液検査値などは反映されづらい点に注意が必要です。

体内年齢(内臓年齢・体組成年齢)とは
タニタの体組成計の体内年齢は、基礎代謝の年齢傾向と、タニタ独自の研究により導き出した体組成の年齢傾向から、測定された結果がどの年齢に近いかを表現したものです。(参考資料:体内年齢とは何ですか? – よくあるご質問|お客様サポート|タニタ)
同じ体重でも、体組成(筋肉量・体脂肪・水分量・内臓脂肪レベル等)により体内年齢は変わり、筋肉量が多く基礎代謝量が高くなるほど、体内年齢は若くなります。こちらも日常的な健康管理に使いやすい指標です。

血管年齢とは
動脈の硬さ・弾力性・脈波速度などを用いて「血管が何歳相当か」を推定する指標です。
指先にセンサーをつけるだけで“血管老化度&血管年齢”を表示するサービスがあります。
指先の装置は、指先に光を当てて脈の波形(フォトプレチスモグラフィ/加速度脈波)を読み取り、独自の換算式で“年齢”に置き換えて表示します。
便利ですが、医療用の診断検査ではなく、次のような限界があります。
・条件に左右されやすい:指先の冷え、緊張、体動、測定クリップの圧、環境光などで数値が変動します。そのため、単回評価ではなく継続モニタリングが望ましいです。
・機器ごとに換算式が違う:同じ人でも機械が変わると「血管年齢」が変わることがあります。したがって、健康意識づけの“目安”として捉えるのが安全です。
血管年齢の指標は、生活習慣病・動脈硬化疾患リスクを“年齢”という形で伝えられるため、健診イベントや企業の健康指標としても人気があります。
他には、ABI(足関節上腕血圧比)とbaPWV(上腕―足首脈波伝播速度)を測定し、必要に応じて「血管年齢」を補助的に示しながら総合的に評価するとのことです。(参考資料:血管年齢は目安?指先測定と医療機関でのABI/baPWV検査の違いをやさしく解説|森嶋クリニック(葛飾区金町))

骨年齢とは
骨年齢は、一般的に骨の成熟度を示すものです。
骨の成熟はある程度規則正しいタイミングと順序で起こるということがわかっています。そのため、骨の成熟度から身体の成長度を把握することができます。
基本的には左手のエックス線写真を用い、手を構成するいくつかの骨の形状から骨年齢を割り出します。(参考資料:メディカル通信 第11回|メディカル|JFA|日本サッカー協会)
骨の成熟過程では管骨の骨端軟骨や手根骨などの立方骨の化骨(二次骨化)が認められ、これを平均的正常人でエックス線検査を行い、評価し、標準化したものです。
骨の形態的成熟は、乳児期から思春期後期まで徐々に進行するため、骨年齢は成熟の程度を細やかに、また客観的に表すよい指標です。
また、骨年齢を促進させる働きを持つのは、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンになります。(参考資料:骨年齢)

肺年齢とは
肺年齢は、呼吸機能検査(スパイロメーター)を用い、1秒量/努力肺活量などから「肺の年齢相当」を示すものです。測定した1秒量が標準値に比べてどの程度であるかを、肺年齢計算式を用いて肺の機能的な年齢に換算した指標です。
1秒量の標準値は、性、年齢、身長によって異なり、20歳代をピークに加齢とともに減少し、1秒量が標準値と比較して少ない場合、「COPDの疑い」と判定されます。
非喫煙者に比べて、喫煙者の肺機能は加齢とともに大きく低下しています。(参考資料:肺機能検査|人間ドック|新潟ウェルネス)

脳年齢とは
脳年齢は、認知機能テストや脳トレ/ゲーム形式の機器などを用い、脳が何歳相当かを示す指標です。
脳は30歳頃から萎縮が始まり、加齢とともに機能が低下すると言われています。
脳加齢の速度には個人差があり、脳年齢が高いと脳の老化、認知症リスクが高い可能性が示唆されます。
脳活性総合研究所 の“脳年齢測定器”サービスでは、約6,000名の受検データと比較して、脳年齢や偏差値が算出されます。(参考資料:脳年齢を1分で簡単にチェック!「脳年齢測定器」|サービス|脳活性総合研究所(脳活総研))

心臓年齢とは
心臓年齢とは、心臓の健康状態を反映する指標です。心電図を用いて、AIが個人の心臓の状態を年齢として推定することができます。
心臓年齢は、心疾患だけではなく、遺伝的背景・生活習慣など様々なリスクに対応した、心臓年齢算出AIサービスで、高精度AIが心電図の微細な変化を検出して“心臓の年齢”を算出し、心臓へ影響を与えている生活習慣を予測します。(参考資料:心臓年齢 – Korbato Health | コーポレートサイト)

お口年齢AIとは
「お口年齢AI」は、歯科パノラマエックス線画像から、現在歯数、インプラント数、アイヒナーの咬合分類、歯槽骨吸収量などの抽出したデータと、生年月日・性別の情報から、「お口年齢」を算出するシステムとなっています。
この「お口年齢AI」システムは、エックス線画像の元データは必要なく、ディスプレイに映された画像をスマートフォンで撮影した写真で認識できるように開発しております。

本システムでは、生活習慣病である歯周病に関連する歯槽骨吸収量も加味して判定しており、また抜歯後にブリッジやインプラント治療を行った場合などは、顕著に「お口年齢」が若年指標として算出されます。
お口年齢AIとオーラルフレイル
「オーラルフレイル」とは、口腔機能(咀嚼・嚥下・発音など)が加齢・生活習慣の影響で徐々に低下し、それが放置されると“口腔機能低下症”や“全身フレイル”につながる前段階の状態を指します。
「何となく食べづらくなった」、「むせやすくなった」、「滑舌が悪くなってきた」など、ごく軽微な変化がサインになります。この段階で気づいてケアできれば、機能の回復や進行予防が可能です。
しかし、見逃したままにしてしまうと、
「口腔機能低下症」→「摂食嚥下障害」→「誤嚥性肺炎」→「要介護」という負の連鎖に入ってしまいます。
そのため、「お口年齢AI」は自治体において、高齢者のオーラルフレイルをスクリーニングする手段としての活用も期待できます。
お口年齢AIと健康経営について
「健康経営」とは、企業・組織が従業員の健康維持・増進を“経営資源”として捉え、戦略的に健康投資を行う考え方です。
従業員の健康が維持されていれば、欠勤・生産性低下・医療・介護コスト上昇を抑えられ、結果として企業価値の向上につながるとされています。

これまで健康経営で重視されてきたのは「メタボ対策」「歩数」「血圧・血糖値」などですが、口腔健康も無視できません。
企業・自治体における歯科健診導入率は依然低く、健康経営に注力している企業でも歯科健診の受診率は低い状況になっております。
本システムでは、約15秒で撮影できる歯科パノラマエックス線画像を用いることにより、簡便に歯科健診やお口年齢を把握できることから、口腔衛生の向上に期待できると考えられます。
最後に
本記事では、健康寿命延伸のために活用されている「体年齢」「血管年齢」「骨年齢」「肺年齢」「脳年齢」「心臓年齢」を整理するとともに、われわれが開発した「お口年齢AI」について解説しました。
口腔は“体の入り口”であり、体の健康を支えるためには、まず「お口の若さ」を保つことが重要です。
お口年齢AIは、その第一歩を科学的にサポートするツールとして、これからの歯科医療・健康予防・企業・地域社会において活用できると考えています。





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