舌下免疫療法中の抜歯はNG?専門医が伝える、歯科治療の隠れたリスクと3つの鉄則

スギ花粉 舌下免疫療法 患者様向け情報

スギ花粉症やダニ・ハウスダストアレルギーに悩む方にとって、根本的な体質改善が期待できる「舌下免疫療法(シダキュア、ミティキュアなど)」は、非常に画期的な治療法です 。毎日1回、錠剤を舌の下に置くだけという手軽さもあり、現在多くの方がこの治療を継続されています。

しかし、お口の健康を守る歯科医師の視点からお伝えしたい、非常に重要な「落とし穴」があります。それは、「舌下免疫療法中の歯科治療には、注意すべきリスクがある」という点です。

今回は、舌下免疫療法を受けている方が歯科医院を受診する際に知っておくべき注意点と、安全に治療を進めるためのポイントを解説します。

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なぜ「歯医者」と「アレルギーの薬」が関係するのか?

舌下免疫療法は、アレルゲン(アレルギーの原因物質)をあえて少量ずつ体内に取り込むことで、体を慣らしていく治療法です

このお薬(シダキュアやミティキュア)の最大の特徴は、「舌の下の粘膜から成分を吸収させる」という点にあります 。通常、健康な粘膜からは適切なスピードで吸収されますが、お口の中に「傷」や「強い炎症」がある場合は話が変わります。

傷口からの「過剰吸収」というリスク

抜歯の後や、歯周病で歯ぐきが腫れている状態、あるいはひどい口内炎がある状態で服用すると、傷口からアレルゲンが直接血管内に入り込み、吸収スピードや吸収量が通常と異なってしまう恐れがあります 。

これにより、お薬が傷口を刺激するだけでなく、稀ではありますが、全身性の激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」を誘発するリスクが高まると考えられています 。

特に注意が必要な歯科処置のケース

「ただの定期検診だから大丈夫」と思わず、以下のような処置を受ける際は必ず事前に申し出てください。

  • 抜歯(親知らずなど): 大きな傷口が伴うため、最も注意が必要です 。
  • インプラント手術: 抜歯と同様、外科的な処置を伴います。
  • 歯石取り(スケーリング): 歯周病がある方は処置中に出血することが多く、その傷もリスクになり得ます。
  • 矯正治療の調整: 装置が当たって粘膜に傷ができている場合があります。

副作用について正しく知る

舌下免疫療法には、特有の副作用があります。治療開始初期に多く見られるのは、以下のようなお口の症状です

  • 口の中の腫れ、かゆみ、不快感
  • 唇の腫れ
  • 喉の刺激感、不快感

これらに加えて、極めて稀にですが、血圧低下や呼吸困難を伴うショック、アナフィラキシーが起こる可能性も否定できません

ただし、過度に恐れる必要はありません。鳥居薬品株式会社の報告(2023年3月時点)によれば、舌下免疫療法中の患者さんが歯科治療を受けた後に、ショックなどの重篤な症状を発症したという報告は、これまでに一例もありません 。適切な知識を持ち、正しく対応すれば、安全に治療を続けることができるのです。

歯科受診時の「3つの鉄則」

歯科医師として、患者さんに推奨している対応は以下の通りです。

必ず「お薬手帳」を提示する

初診時はもちろん、舌下免疫療法を始めたタイミングで必ず歯科医師に伝えてください。製薬会社も、口腔内に傷や術後がある場合は、処方医の指示に従って服用を判断するよう推奨しています

抜歯や手術前後の「休薬期間」を確認する

一般的には、抜歯などの外科処置を行う当日、および翌日・翌々日の数日間は、お薬の服用をお休みすることを推奨するケースが多いです。傷口が塞がり、出血の不安がなくなるまで待つことが大切です。

処方医(耳鼻科など)にも相談する

歯科医師だけでなく、舌下免疫療法を処方している主治医にも「近々歯科治療(抜歯など)を受ける予定がある」ことを伝え、投与の可否について指示を仰いでおくと完璧です


健やかな粘膜を保つためのおすすめアイテム

舌下免疫療法の効果を十分に引き出し、トラブルを防ぐためには、日頃からお口の中の環境を整え、粘膜のバリア機能を維持することが重要です。歯科口腔外科の現場でも推奨している、低刺激で高品質なケア製品をご紹介します。

粘膜を傷つけない「超極細毛歯ブラシ」:テペ(TePe) スペシャルケア

歯科手術や、粘膜が非常に敏感な時期のために開発された「極細毛」の歯ブラシです。一般的な「やわらかめ」よりもさらに柔らかい12,000本の超極細毛が、粘膜を撫でるように汚れを落とします。

粘膜を保護する「口腔保湿ジェル」:ウエルテック コンクール ジェルコートF

高い殺菌力とフッ素を配合し、虫歯や歯周病を効果的に予防するジェル状の歯磨き剤です。発泡剤や研磨剤が無配合の低刺激な設計により、デリケートな口腔内を傷つけることなく優しく清潔に整えることができます。


まとめ:安全な治療は「コミュニケーション」から

舌下免疫療法は、アレルギーのない快適な生活を手に入れるための素晴らしい治療です。歯科治療を理由にこの治療を諦める必要はありません。

大切なのは、「今、このお薬を飲んでいます」という一言を歯科医師に伝えることです。それだけで、私たち歯科医師はあなたの安全を守るための最善の準備を整えることができます。


【参考文献】鳥居薬品株式会社「シダキュア・ミティキュア 適正使用へのご協力のお願い(2023年4月)」:https://www.torii.co.jp/iyakuDB/

プロフィール
田島聖士

日本大学松戸歯学部を卒業後、2004年から11年間、防衛省海上自衛隊の歯科医官として勤務し、2010年に遠洋練習航海(世界一周コース)で約5ヶ月間の洋上勤務(練習艦「かしま」)、2011年には東日本大震災で歯科災害派遣(護衛艦「ひゅうが」)の経験を持つ。
2015年からAOI国際病院 歯科口腔外科での臨床の傍ら、深層学習アルゴリズムを用いた歯科エックス線画像のAIシステム開発をし、2025年から日本初の「エックス線歯科健診」の社会実装を行い、「お口年齢AI」も開発した。
現在は、葵会グループ統括本部 DX戦略部長、医療創生大学 歯科衛生専門学校長、AOI国際病院 歯科口腔外科部長を兼任している。

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