歯科治療恐怖症、異常絞扼反射(重度の嘔吐反射)がある方の歯科治療(静脈内鎮静法、全身麻酔)

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この記事では、歯科治療恐怖症、異常絞扼反射(重度の嘔吐反射)の治療について、これまでの私の臨床経験と知見を中心に分かりやすくまとめました。

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歯科治療恐怖症

過去に受けた歯科治療で嫌な思いや怖い思いをしたこと等により、歯科治療に対して不安や恐怖心を持っている方のことです。

歯科恐怖症の方は、虫歯等になっても歯科医院への受診をためらい治療ができないため、口腔内環境の悪化がしやすい傾向にあります。

不安障害(不安症)の部分症状として、歯科治療恐怖症を呈する方もいます。

異常絞扼反射〈いじょうこうやくはんしゃ〉

絞扼反射とは、舌や口蓋〈こうがい〉(口腔の上部)等の刺激による嘔吐様の反射のことで、歯科用のミラー等を口の中に入れただけでも、嘔吐反射が生じることがあります。この反応が強い異常絞扼反射のある患者様では、奥歯の治療等が難しくなります。

反射の原因としては、①口腔形態によるもの、②精神疾患等の全身状態によるもの、➂治療に対する不安、恐怖心、トラウマ等の心理的によるものがあります。

静脈内鎮静法下での歯科治療

歯科恐怖症、異常絞扼反射、重度の嘔吐反射がある患者様に対しては、静脈内鎮静法や全身麻酔での治療が必要になります。

静脈内鎮静法は鎮静剤(ミダゾラム等)の点滴を行うことにより、リラックスした状態で治療を行う方法です。全身麻酔のように完全に眠るのではなく、ウトウトとした状態になり、歯科治療に対する不安、恐怖、ストレスを軽くできます。自発的な呼吸はあり、呼びかけにはゆっくりですが応じることができる状態を得るように、鎮静剤の投与量を少しずつ増やし鎮静状態を調整します。

血圧や血中酸素飽和度等のモニタリングを行いながら歯科治療を行い、通常は入院する必要なく、治療後に少し休んで当日に帰宅できます。

ミダゾラムという薬は安全域が広いベンゾジアゼピン系の鎮静剤で、少量でも健忘効果(起きた時には覚えていないことが多いです)が期待できます。ただし、上気道閉塞を起こすこともあるため、注意が必要になります。

全身麻酔下での歯科治療

重度の歯科恐怖症、異常絞扼反射の患者様、睡眠薬を長期間に渡って内服されている方は、静脈内鎮静法では治療が難しく、全身麻酔での治療が必要な場合もあります。

麻酔科医師が麻酔ガスや静脈麻酔薬を用いて全身麻酔をかけ、常に血圧、心拍数、心電図、血中酸素飽和度、終末呼気炭酸ガス分圧、体温等をモニタリングして、それらの変化に対応した処置がとれるように全身管理を行います。

歯科口腔外科の治療や手術では、鼻からチューブを入れて呼吸の管理を行い、口の中の手術を行います。

全身麻酔では、完全に寝ている状態で歯科治療・手術を行うため、恐怖や不安等を全く感じることはありません。また、長い時間の治療も可能になるため、一度に多くの部位の治療を行うことができ、治療回数が少なくすることもできます。

全身麻酔の治療では、通常2泊3日程度の入院が必要になりますが、病院により入院日数が異なりますので、詳しくは各病院に問い合わせて下さい。

また、全身麻酔を受けても大丈夫かどうかを調べるために、術前検査(血液検査、心電図、胸部エックス線等の健康診断)を行い、現在は入院の前日か前々日に新型コロナウイルスのPCR検査(唾液採取)も必要になります。

静脈内鎮静法や全身麻酔下での治療を検討されている方は、総合病院や大学病院の歯科口腔外科を受診して下さい。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

【参考文献】
・最新口腔外科学第5版(榎本昭二他、医歯薬出版株式会社)
・第5版 SIMPLE TEXT 口腔外科の疾患と治療(栗田賢一他、永末書店)

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