2026年3月30日、厚生労働省は医療広告等ガイドラインを改正し、あわせてQ&Aとウェブサイト等の事例解説書(第6版)も更新しました。
今回の改正は、医療広告の基本ルールそのものを大きく変えるものではありませんが、歯科医院の実務には非常に影響があります。特に大きいのは、オンライン診療受診施設に関する広告ルールの新設と、SNS・動画を含む情報発信の見方がより具体化されたことです。
歯科医院では、ホームページ、自由診療ページ、Instagram、YouTube、Googleビジネスプロフィール、院内掲示など、多くの接点で患者さんに情報を届けています。そのため、今回の改正は一部の医療機関だけの話ではなく、ほとんどの歯科医院が見直し対象になる改正と考えた方がよいでしょう。
今回の改正で何が変わったのか
今回の改正で最も重要なのは、ガイドラインに「オンライン診療受診施設に関する広告」の章が新設されたことです。ガイドラインの目次にも新たに「第4 オンライン診療受診施設に関する広告について」が追加され、広告可能事項や表現方法が整理されました。
ここでいうオンライン診療受診施設は、患者がオンライン診療を受けるための場所であって、その施設自体が医療を提供する主体ではないという整理です。そのため広告では、「そこで診療しているように見えるが、実際に医療を提供するのは誰なのか」を、患者さんに誤解なく伝える必要があります。Q&Aでは、「オンライン診療は、当施設が提供するものではなく、○○医療機関と連携して実施しております」、「この施設は医療機関ではなく、○○医療機関が診療を行うものです」
のような表示例が示される一方、「△△医師が診療を行っています。」だけでは不十分とされています。
また、オンライン診療受診施設ではないのに、患者さんがそう誤認する名称をつけることも不可とされました。Q&Aでは、「オンライン診療受診ブース」「オンライン診療スポット」といった名称が例示されています。

歯科医院にとってなぜ重要なのか
歯科医院では、インプラント、矯正歯科、審美治療、ホワイトニングなど、自由診療の案内が多く、写真や動画を使った情報発信も盛んです。そのため、今回の改正の実務的な意味は大きく、ホームページだけ整えればよい時代ではなくなったといえます。
事例解説書第6版では、SNSに関する事例が拡充され、プロフィール欄、投稿、固定投稿、返信等を含めて、患者さんにとって一体的かつ一覧性をもった情報提供が必要だと示されています。つまり、自由診療の必要情報が一つの投稿で完結しない場合でも、患者さんが全体を分かりやすく確認できる形で示さなければならない、ということです。
歯科医院向けチェックリスト
まず見直したい10項目
以下は、歯科医院が実際に点検しやすいように整理したチェックリストです。
オンライン診療の案内で、診療主体が明確になっているか
- 自院が診療主体なのか、連携医療機関が診療主体なのかが明確
- 「誰が診療を行うのか」が患者さんに誤解なく伝わる
- 表示が小さすぎる、目立たないなど、視認性に問題がない
Q&Aでは、「当施設が提供するものではなく、○○医療機関と連携して実施」といった明示例が示され、「△△医師が診療を行っています。」だけでは不十分とされています。
オンライン診療用スペースや案内名称が紛らわしくないか
- 医療機関ではない場所に、医療機関と誤認される名称を使っていない
- 「オンライン診療ブース」「オンライン診療スポット」など類似名称の使用がない
- 院内掲示、予約ページ、LP、看板でも同じ表現を使っていない
紛らわしい名称の使用はQ&Aで明確に不可とされています。
自由診療ページに必要情報がそろっているか
- 費用だけでなく、治療内容も記載している
- 主なリスク・副作用を記載している
- 治療期間や回数の目安が分かる
- 「○○円〜」だけで終わらず、通常必要な費用の全体像が分かる
事例解説書では、自由診療の情報提供に関して、必要な情報が不足している事例や、限定解除要件を満たしていない事例が拡充されています。
症例写真・ビフォーアフターの見せ方が適切か
- 写真だけを強く打ち出していない
- 治療内容、費用、主なリスク・副作用の説明がある
- 見た人が効果を過度に期待するような見せ方になっていない
ガイドラインでは、患者を誤認させるおそれがある治療前後写真等は問題となり得ると整理されています。
患者体験談や口コミの扱いが適切か
- 体験談を広告として強く打ち出していない
- 主観的な満足表現ばかりを前面に出していない
- 「絶対満足」「必ず治る」といった断定表現がない
ガイドラインでは、患者等の主観に基づく体験談や、虚偽・誇大・比較優良に当たる表現は引き続き問題となります。
SNSプロフィールや固定投稿を放置していないか
- InstagramやXのプロフィール文が最新
- 固定投稿やハイライトの説明が最新
- リンク先ページも含めて情報がつながっている
事例解説書では、プロフィール欄や投稿全体を通じて、一体的かつ一覧性のある情報提供が求められています。
YouTubeや動画の概要欄も点検しているか
- 概要欄に自由診療の案内を書く場合、必要情報が不足していない
- 動画タイトルやサムネイルが誇大表現になっていない
- 動画だけでなく、固定コメントや説明欄も確認している
今回の事例解説書改訂では、SNS・動画における広告事例の内容拡充が明示されています。
数字や実績表示に根拠があるか
- 症例数、満足度、来院者数などに根拠がある
- いつ時点の数字か明記している
- 古い実績をそのまま掲載していない
ガイドラインは、患者の適切な選択を阻害しない正確な情報提供を前提としており、変動情報の表示には慎重な運用が必要です。
院内掲示や看板、サイネージもWebと整合しているか
- 待合室モニターやポスターの表現が古くない
- ホームページと院内掲示で内容が食い違っていない
- 自由診療の表示内容が媒体ごとにバラバラでない
広告規制はホームページだけではなく、患者誘引性のある表示全体を視野に入れる必要があります。
制作会社任せにせず、院内で確認する体制があるか
- 投稿前チェックの担当者が決まっている
- ホームページ改修時に医療広告の観点で確認している
- SNS、LP、広告バナーも含めて定期点検している
医療広告規制は医療機関本人だけでなく、広告作成や掲載に関わる事業者にも及び得るとQ&Aで示されています。

まず優先して直したい3つ
すべてを一度に見直すのが難しい場合は、まず次の3つから着手するのがおすすめです。
1つ目は、オンライン診療の案内表示です。
診療主体が曖昧だと、今回の改正ポイントに直接関わります。
2つ目は、自由診療ページです。
費用、治療内容、リスク・副作用が患者さんに分かる形で整理されているかを確認しましょう。
3つ目は、SNSと動画です。
プロフィール、固定投稿、概要欄まで含めて、一体として見直すことが重要です。
まとめ
今回の改正は、単なるルール追加ではなく、患者さんに誤認を与えない、分かりやすく誠実な情報提供を求める改正です。歯科医院にとっては、オンライン診療の案内、自由診療ページ、SNS・動画発信の3領域を中心に、情報発信全体を見直すよい機会といえます。
広告規制への対応は、単に違反を避けるためだけではありません。患者さんが安心して医院を選べるようにするための、信頼づくりそのものです。今回の改正を機に、自院の発信をぜひ一度総点検してみてください。
出典
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」〔令和8年3月30日最終改正〕
- 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」〔令和8年3月30日改訂〕
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)について」〔令和8年3月30日事務連絡〕
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」


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